バラモン教が、紀元八〇〇年のころ、新たな聖典を編集し再生したものとされているが、インド教ともいわれるヒンズー教が、仏教についでインドネシアに伝わってきたのは二世紀から三世紀のころとされている。このうちバリ島では、内陸部の住民たち、特に稲作に従事した人たちが影響をうけたとされている。インドネシアでは、「クルジャ・サマ」とよばれる相互扶助の精神を持つことを美徳としているが、田植え、稲刈りなど、狭い地域での助け合いながらの共同労働を円滑に進めるために、共通の精神的な支えとしてのヒンズー教が農村に浸透していった可能性は極めて高い。同時に、ヒンズー教が、古来のアニミズム、霊魂信仰と結びついていったことは疑いない。一方のイスラム教は、二一世紀から一四世紀にかけ、ペルシャやインド洋西海岸からの貿易商人によって広められた。地域は、北スマトラからジャワ全域に伝わっていったという説があるが、神の前では信者の総てが平等であるという教義を打ちだしたイスラム教は、カーストに似た階級差別に苦しんでいた人たちにとって魅力あるものであった。