日本では、高度成長期以後、人は生涯をつうじて、学校でも社会でも競争原理の渦の中に投げ込まれ、自己の人生の主体として生きるということなどは、意識にのぼらなくなった。世の中にはいろいろな生き方があり生きる喜びがあるということが、個人にも社会にも学校教育にも見えにくくなっている。子どもは管理教育で本来ゆたかなはずの人間性を摩滅させられ、勤労者はワーカホリ″クの企業戦士に追い込まれ、退職後は産業廃棄物として使い捨てられているかのようである。
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これは、もちろん基本的には戦後の日本の政治、経済、社会全般に起因するのであろうが、まちと居住地の状態も大きな影響を与えている。現代日本の人心の荒廃を住環境だけのせいにするつもりは毛頭ない。だが、日本人の心や身体が良質に育つ環境でなくなっているのは確かであろう。日本人が人間らしい心を回復するには、居住環境の改善が中心課題のひとつになるべきだと思う。居住のありかの根本的な見直しが求められている。それは、一口でいえば「居住福祉」の実現である。「居住福祉社会」とでもいうべき社会を、新しい時代の文化としてつくりあげていかねばならないと思う。